🚗 #1:【人生の敗北者】家族に連れ出された、父の「遊びの交差点」(Vol.1 アウトレット編)

怒られているパパ あそびの交差点

土曜の朝の完全敗北。足の爪を切る父を襲った「愛のある非難」

週末の土曜日。私はリビングのソファに深く沈み込み、寝巻きのまま、のんきに足の爪を「パチン、パチン」と切っていました。

そんな私に、妻の愛が静かな、しかし逃げ場のないトーンで促します。 「誠さん。早く着替えなさいよ。みんなもう、準備できてるわよ?」

その言葉が終わるやいなや、二階から長女の陽菜が風のように降りてきました。爪を切る私の姿を見た瞬間、彼女の目が「軽蔑」の色に染まります。 「うわ、パパ!マジで忘れてたんでしょ?今日、稲敷のアウトレットに連れてくって約束したじゃん!信じらんない、最低!」

追い打ちをかけるように、愛が溜息をつきました。 「誠さん。家族との約束を忘れて、『自分のことだけが世界だ』と思うのは……さすがに悲しいわ」

絶体絶命の父を救った、息子・陽太の軽妙なフォロー

愛の冷たい言葉が突き刺さり、リビングに重苦しい沈黙が流れます。私が、切ったばかりの爪を拾うことすらできず固まっていると、ソファでスマホをいじっていた陽太が、ひょいと顔を上げました。

「陽菜、父ちゃんをあんまり責めると、現地で財布の紐が固くなっちゃうぞ?昨日の父ちゃんは仕事で脳みそが焦げ付いてたんだよ。今は自分の名前すら怪しいレベルだろ。見ろよ、あの顔!」

陽太はそう言ってニヤリと笑うと、私の肩をポンと叩き、小声で囁きます。 「仕事熱心なのはいいけどさ、今は挽回に集中しようぜ。遅れた分は、途中でアイスでも食わせればアイツの機嫌も直るって!」

「……あ!それなら!今、コンビニで限定のスイーツがあるんだ~♪」

陽太と私は顔を見合わせました。……聞こえてたのか。


中庭のベンチで突きつけられた、私の「心の空洞」

(アウトレットに到着。荷物番をする誠に、愛と陽菜が歩み寄る)

愛:「誠さん。朝は厳しく言ってごめんなさいね。でも、ここからが大事なのよ」 陽菜:「パパはさ、仕事ばっかりで視野を狭めるのやめて、私たちみたいに世の中の『多様な情熱』に目を向けてみたら?」

二人は楽しそうに行き交う人々を指差します。 愛:「みんな、『自分の好きなこと』を見つけて、互いに認め合って、人生を彩っているの。人生とは、そういうものよ」

二人は私に聖母のような微笑みを残すと、それぞれの好きな店へと消えていきました。

愛する家族がいれば十分……その信念が揺らぎ始めた瞬間

入れ替わりでやってきた陽太に、私は胸の「空洞」をさらけ出しました。 「陽太……俺は、家族さえいれば他には何もいらないと思って仕事をしてきた。だが……俺は今、何を面白いと感じればいいのかすら、分からなくなってるんだ」


陽太が差し出した「遊びの処方箋」。山田五郎氏の哲学に学ぶ

「父ちゃん、ずっと仕事一辺倒で頑張ってきたのは尊敬してるけど、遊びや流行りを『何が楽しいんだか』って冷めた目で見るのはもったいないよ」

陽太は静かにスマホの画面を私に向けました。そこには、山田五郎氏の鋭い言葉が。

『多くの人が熱狂しているものには、必ず何かしらの魅力がある。そう信じて前向きに喰らいつけば、必ず面白さの突破口が見つかる』

「『わからない』を『つまらない』で片付けるのは、自分の世界を広げるチャンスを捨ててるのと同じなんだよ。世の中でこれだけの人が熱狂しているものには、必ず人を惹きつけるロジックやエネルギーがあるんだ。

『教養とは、面白がれるものを増やすための武器である』

これから先の人生、仕事以外のものを面白がれるようになるために、まずは食わず嫌いせず、その熱狂に乗ってみることでしか見えない景色を探してみてよ」

「だからと言って『いらないものまで欲しがる人間』にならなくていい。俺たちが求めているのは、父ちゃんの『心の視野の拡大』なんだ。物じゃなくて、その裏にある『情熱』を面白がってよ」

彼は立ち上がり、広大なモールを見渡して言いました。 「父ちゃん、気付いてるか?このアウトレットモールこそが、まさに『遊びの交差点』なんだよ!」


覚醒。妻の「秘密基地」ル・クルーゼへ一歩踏み出す

「遊びの交差点」……! 陽太の言葉が、私の50年の人生観を根底から揺さぶりました。

俺が探すべきは、自分の知らない「何か」じゃない。愛が、あんなに目を輝かせて語る「ル・クルーゼ」という世界に飛び込み、「面白さの突破口」を探すことだ!

私はベンチから立ち上がり、ショップへと足を踏み出しました。 「愛、ちょっと待ってくれ!」

色鮮やかな鍋が並ぶ店内で、愛が驚愕の表情で振り返ります。 「誠さん!?どうしたの?キッチン用品なんて、今まで絶対入らなかったのに!」

「……愛。君がそんなに夢中になる世界を、俺も知りたいんだ。その楽しみ方のコツ、俺にも教えてくれないか?」

自分の殻に閉じこもっていた父・誠。50歳にして初めて、妻の「秘密基地」への潜入が始まりました。

【次回予告】 第2話:【愛の秘密基地】キッチン用品専門店で発見した、主婦の「効率化」という名の遊び!

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