AIの「正解」に打ちのめされた、惨めな参道
「……なあ、やっぱりこれ、スマホの方が良くないか?」
鹿島神宮の深い緑に包まれた参道。陽太の持つPixel 9と、私のRX100で同じ景色を撮り比べた私は、思わず弱音を吐いた。


陽太はポケットに片手を突っ込んだまま、リズム良く画面をタップしている。それだけで、うっそうとした巨木の影も、葉の間から漏れる強烈な光も、AIが瞬時に判断して「誰もが納得する完璧な一枚」に仕上げていた。
一方、私のRX100は無残だった。「おまかせオート」で撮った写真は、真っ白に空が飛んでいるか、あるいは陽太を撮ろうとしても顔が真っ黒に沈んでいる。
「だろ? 父ちゃんのRX100は確かにレンズはいいけど、こういう極端に明るい場所だとスマホの計算能力が勝っちゃうんだよね。ほら、この空の青さ、不自然なくらい綺麗でしょ?」
見せられたPixelの画面は、悔しいほどに鮮やかだった。
「……ごめん、ちょっと待ってくれ。指が動かなくてさ」
焦れば焦るほど、RX100の小さなボタンが操作できない。老眼で液晶の文字も霞む。
「父ちゃん、まだ? 陽介たち、先に行っちゃったよ」
陽太の何気ない一言が、私の胸にチクリと刺さった。最新鋭のスマホを使いこなす息子と、時代遅れのデジカメを抱えてまごつく父親。
(……やっぱり、俺には早かったかな。メルカリで売るのが正解だったか)
一度はレンズを引っ込めようとした。だが、カバンの中で指に触れた「あるもの」が、私の背中を止めた。
カメラ初心者が最初に読むべき「基本の1冊」 ※誠パパが頼った『RX100完全ガイド』機種別マニュアル本
0.7段の暗闇で見つけた、スマホには映らない「光」
「……いや、あと一枚だけ。あと一枚だけ試させてくれ」
私はカバンから、昨日こっそりポチっておいた『RX100完全ガイド』を取り出した。
「なになに……『白飛びを防ぐなら露出補正をマイナスに振れ』……『背景をボカすならAモードでF値を最小にしろ』……」
私は震える指でダイヤルを「A」に合わせ、露出補正ボタンを押し込んだ。画面を見ながら、目盛りをマイナス側に動かしていく。
「マイナス1.0。暗すぎるか……? いや、これでいい」
液晶の中の世界が、スッと暗くなった。しかしその瞬間、液晶の中の木漏れ日が、まるで意思を持った生き物のように浮き上がってきた。
「……あ! 陽太、見てくれ!」
シャッターを押し込む。軽い「カシャッ」という物理的な振動が、指先から脳へ伝わった。
背面液晶に映し出したのは、スマホが「暗すぎる」と判断して勝手に明るく補正してしまう、静謐な森の闇。そして、その闇を切り裂くように降り注ぐ、重厚な一筋の光だった。

「……なんだこれ。俺、こんなの撮りたかったのか」
喉の奥が熱くなった。10枚撮って9枚は失敗だ。でも、この「自分の意志で光をねじ伏せた一枚」が撮れた瞬間、脳内に強烈なドーパミンが溢れ出した。
不器用な指先が、精密な機械の歯車と噛み合い、自分の心がレンズを透過して記録された――そんな万能感が、そこにはあった。
遅い昼食と「家族の物語賞」。判定は引き分け
「あなた、もうお昼過ぎてるわよ。家で陽菜と陽介も待ってるわよ」
愛の呆れ顔で、ようやく我に返った。気づけば私は、苔むした石像を撮るために地面に這いつくばっていた。
「あと一枚! この木漏れ日が、露出マイナス0.7でどう写るか……」 「はいはい、撤収!」
帰宅してからの遅い昼食。お土産のお蕎麦をすすりながら、恒例の「4Kテレビ鑑賞会」が始まった。
「まずは、陽太のPixel 9から」
画面に映る、パンフレットのように美しい神宮。「すごーい! ポストカードみたい!」と陽菜がはしゃぐ。どこにも隙がない、100点の記録だ。
「次は……父さんのRX100」
画面が切り替わると、「……暗っ!」と陽介が笑った。真っ黒な写真、ピントがボケボケの写真、何が撮りたかったのか分からない写真が続く。
しかし。 深い緑の苔が、しっとりと濡れた質感を持って映し出された瞬間、リビングが静まり返った。スマホが勝手に消し去ってしまう「影」の美しさが、そこにはあった。
「……なんだか不思議ね」
愛が静かに言った。
「誠さんの写真は、失敗も多いけど『誠さんがどこを見て、どう撮りたかったか』が伝わってくる気がするわ」
非効率という名の「最高の贅沢」
「なあ陽太。スマホのシャッターは『記録の合図』に過ぎなかった。でも、RX100が指先に返してきた小さな振動は、俺が今、この光を切り取ったという『手応え』だと感じたんだ」
「スマホなら一瞬で終わる作業を、俺はダイヤルを回して、やっとの一枚を撮る。正直、めちゃくちゃ面倒くさいんだが……それが、たまらなく面白いんだ」
「……へぇ、父ちゃん、わかってきたじゃん。それが『趣味』の入り口だよ」
効率を重んじるプログラマーの息子が、初めて私を「仲間」として認めたような、満足げな笑みを浮かべた。
「判定は、私が下します」
愛が立ち上がる。
「陽太さんの写真は、思い出を一番綺麗に残してくれた『記録賞』。でも、誠さんの写真は、私たちに笑い合う時間をくれたから『家族の物語賞』。というわけで、今回は**『引き分け』**!」
勝負には決着がつかなかった。だが、私の心には確かな熱が灯っていた。
(……もっと、自分のイメージ通りに撮ってみたい。でも、このRX100の小さなボタンじゃ、俺の指は追いつかないんだよな……もし、このダイヤルがもっと大きかったら。もし、この光を覗き込む『窓(ファインダー)』があったなら。俺はもっと、この世界の深くまで潜っていけるんじゃないか)
遅い午後の光がリビングに差し込む中、私の指先は、まだ見ぬ「大きなカメラ」の重みを、無意識に探していた。
今回の「沼」のアイテムリスト
誠パパのように「自分の意志で撮る楽しさ」に目覚めたあなたへ。 撮影をもっと快適に、もっと深く楽しむためのアイテムをご紹介します。
① SONY RX100 シリーズ
スマホにはできない光学的表現と、掌に収まる精密機械の質感を。
[商品リンク:SONY RX100シリーズ]
RX100の中古在庫を楽天市場でチェック② SONY アタッチメントグリップ AG-R2
誠パパが「指が滑って操作しにくい」と焦っていた原因は、RX100のツルリとした美しいボディにあります。これひとつ貼るだけでホールド感が劇的に変わり、露出補正も落ち着いて操作できるようになります。
[SONY AG-R2]
③ 反射防止・指紋防止 液晶保護フィルム
屋外での撮影で「画面が霞んで見えない」のは、シャッターチャンスを逃す原因に。特に光の反射を抑える低反射タイプは、快適な撮影に欠かせない必須アイテムです。
[液晶保護フィルム]
④ ステップアップへの道:本格ミラーレス一眼
物語の最後に誠パパが無意識に探していた「大きなカメラの重み」。ダイヤルが独立し、ファインダーを覗いて撮る感覚は、スマホでは絶対に味わえない快感です。
- SONY α6400 / α6700:RX100と同じソニー製。直感的な操作でステップアップに最適。
- Nikon Z fc:ダイヤルを回す楽しさを追求した、誠パパ好みのクラシックデザイン。
[商品リンク:SONY α6400] [商品リンク:Nikon Z fc]
次回予告:


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